「いらっしゃいませー! …ん?」

店の戸が開く度に響き渡るこのお店の名物の威勢のいいその声も、今回は少し様子が違った。
引き戸が開いてその客が顔を出した途端、声のトーンがハッキリと変わった。

「いらっしゃい!!」

「こてっちゃん!!」

大輔の嬉しそうな声と表情に、虎鉄も心底嬉しくなる。 毎日のようにメールを交わしているとは言え、やはりこうして直に会うのは嬉しい。
義理の兄に当たる(厳密に言うと当たらないのだが)大輔の仕事場を訪れるのは、今回が初めてである。 
物産展に出店するくらいだから随分と歴史のある昔ながらの古びた大きな店舗を予想していたのだが、実際のお店は綺麗で小洒落た内装をしていた。 店の大きさ自体もそう大きなものではなく、中にいる大輔の巨体が少しアンバランスな程で少し可笑しかった。

「タイヤキ屋さん、お正月からやってるんだねー」
「うん。 ほら、おせち料理って結構飽きるじゃない? だからコンビニとかもそうだけど、うちもお正月って結構儲かるんだよー! あ、店長!!

話し声を聞いてか、奥からこの店の店長が顔を見せた。
獣人ではなく、人間の男性だ。 年は50代後半であろうか、目が細く、いかにも気難しそうな顔をしている。
「大輔、もうあがっていいぞ。 折角京都にいらしたご家族を待たせるんじゃない」

特に笑顔を浮かべるでもなく、淡々と大輔がやってた業務を引き継ぎながら店長が言った。 そのまま虎鉄と視線が合うと、軽くお辞儀をしてくれた。
虎鉄も慌ててお辞儀を返すと
「他の皆は?」
大輔が手を拭きながら訊いてきた。

「皆、表で待ってるよ。 ぞろぞろ入って来ちゃ迷惑かと思って」
「そっか! じゃ、ちょっと待ってて! すぐ着替えてくるから! 店長、じゃあすいません。 お先に失礼します!」

威勢よく頭を下げると、店長が出てきた店の奥へとドスドスと駆けて行った。
事前に店長さんには今日のことを話してあるそうだ。 とはいえ、何となく気が引けたので「どうもすいません」と一言だけ言うと

「大輔、随分前からはしゃぎっぱなしでしてね。 義理の弟が遊びに来ると」
「そ、そうなんですか…?」

「仲良くしてやって下さい」

そう言うと、深々と虎鉄に頭を下げた。 虎鉄は大慌てになるも、その一言がすごく嬉しかった。 笑顔で返すと、店長さんも少しだけ口元を緩めて微笑んだ。

「そうだ、店長さんに一つお願いがあるんですけど…」




「…ま、いっか。」


「じゃ なぁああああい!!!!!」

「ギャァアアアアアアアア!!!!!」

「こ! こてっちゃん…!!? だ、駄目だよ、従業員用のとこに入って来ちゃ!!」
「ちゃんと店長さんに許可貰ったよ!! ていうか、『ま、いっか』じゃないよ!! 『ま、いっか』じゃないよ!!!! ちゃんとパンツ穿いてよ!!!」
「え、えぇええ!!? だって、いろんな人が来てるんでしょ?」
だからこそだよ!! 俺、大ちゃんのこと自慢のお兄ちゃんだって紹介したいのに、その裏で実はノーパンでいつその事がバレるかドキドキはぁはぁしてるなんて考えたら、自慢出来るものも出来ないよ!!!」
「えへ。 こてっちゃん、俺の事自慢って言ってくれるんだ〜。 嬉しいなぁ〜! でもなぁ…うーん、自慢って言ってくれるのは嬉しいけど…うーん」

「そのトランクス穿いてくれないなら…」
「ん?」
「このボクサーパンツを穿いてもらうよ!!!?」

「イヤだよ!!! そんなどこもかしこもがっちりガードされててポロリの可能性が全く無い下着!!!!」

本当、大ちゃんって本物だよなぁ…

何とか虎鉄の熱意が伝わったらしく、渋々ではあるが大輔は自前のトランクス(サイズがおかしい)を穿いてくれた。
二人揃って店の前に回ると、知らない顔が沢山あって正直驚く大輔だが、久しぶりに会った顔に満面の笑顔になった。

「こてパパさん! お久しぶりです!!」

こてパパ!!? にろさんと新郷が度肝を抜かれる中、当の本人は嬉しそうに手を振った。
「大輔君ー! 久しぶりー!!」
大輔も真っ先にパパの側に走り寄る。 嬉しそうにブンブン握手をすると
「あ、パパさん今日は本格的に変装してるんですね」
楽しそうに笑って言った。

特急列車内では人が全くいなかったから良かったが、京都駅につくと流石にそうも行かなくなった。 以前息子が貸してくれたのと同じバンダナを締めて、今回は更に眼鏡と付け牙を用意した。
「そうして見ると、本当にこてっちゃんとパパさんってそっくりですよねぇ!」

どうも大輔はこのパパの喜ぶツボを無意識に把握しているらしい。 鉄志は顔を真赤にしながらも大いに喜んでいる。
「お言葉に甘えて来させて貰ったよ。 大人数で申し訳ないね」
気を遣うパパに「いえいえ!」と笑いながら大輔が首を振ると、虎鉄がタイミングを見計らって大輔に皆を順に紹介した。
にろさんは既にメールで何度も話題に登っていたし、新郷の事も友達になってすぐに報告したので、自己紹介は随分とスムーズに進んだ。 昔は相当暴れていた大輔だが、今は流石に接客業、人当たりよく受け答えするのがそのスムーズさの要因とも言えた。

と、思われたのも束の間!!
虎伯と鷹継を紹介しようとした時、いきなり大輔が声をあげた!

「殺し屋コンビだ!!!」

ギクゥウウウッ!!!

「え、ちょっ、何言い出したの大ちゃん!!? 失礼じゃない!!」
「え、そう? 俺的には褒め言葉だったんだけど。 ほら、殺し屋って格好イイじゃない! 黒のロングコートとかトレンチコートとか、もろ漫画に出てきそうじゃない!?」
「…トレンチコートはむしろ自警団じゃない?」

虎鉄のツッコミに「そっか」と笑いながら、大輔は頭を掻いた。
「すいません、失礼なこと言っちゃったみたいで。 こてっちゃんの一応義理の兄という事で、蔵王大輔です!」
「い、いやぁ…ハハ。 突然なので驚きましたぞ? えー、旅の途中でご一緒させて頂く事になった、わしが石動虎伯で、こっちが五駿木鷹継といいます。 宜しく」
一瞬「?」になるも、いするぎの苗字の違いの説明をすると納得した。 かと思ったのだが、虎伯の予想に反して大輔は未だに疑問の表情である。

「どうかしましたかの…?」
「虎伯さんって『鬼頭』じゃないんですか?」

ギクギクゥウウウウウッ!!!!

「はは、やっぱり同じ獣人だとそっくりに見えちゃう? ほら、髪の色も瞳の色も俺や父さんと全然違うじゃん」
「こてっちゃんのお爺ちゃんじゃないの?」
「違う違う! っていうか、そんなお年じゃないでしょ?」
「そうなんだ。 いや、外見とかどうとかじゃなくて、何て言うのかな…雰囲気? ほら、俺がこてっちゃんのマンションに初めて行った時、こてっちゃん何か怒ってたでしょ? あの時の雰囲気に似てる感じがしたんだけど」

大輔と虎鉄が話し合っているのをちょっと下がって見ながら、虎伯はそっと石動に話しかけた。
「な、何なんじゃろ…彼?」
「は。 恐らくは私の天敵になる人物ではないかと存じます。」
「天敵…?」
「は。 直感型と言いましょうか、咄嗟に感じたことに頭が付いて行かないタイプのようです。 簡単に申し上げれば常識や遠慮といったものが働かず、感じた事をそのまま口にするタイプという事になります。 このタイプは如何な情報を与えてもそれらを全て無視してとんでもない事を口走ったりします故、全く予想不可能な経路で真実を言い当てる事があります。 本人の自覚としては『適当に言っている』といったニュアンスなのでまだ救われますが、彼のようなタイプが隼人様と組まれると厄介です。」

この部下にそこまで言わしめるとは、正直かなり驚いた。
と、ちょうどにろさんが大輔に声をかけた。
「では、大輔くんも今日からは『トラトラファミリー』の仲間というわけだな!!」
新たに加わったメンバーに、どうだと言わんばかりにその名を口にするにろさん! 

がー

「え? とらとらふぁみりー? ダサッ!!!」
大輔がゲラゲラ笑い出した!! 彼以外の全員の空気が一瞬にして凍りつく!!
「もう、こてっちゃんでしょ!? そういう訳わかんないネーミングするの!! ていうか、とらとらふぁみりーって!! ブフッ!!!」

どうやらツボったようである、にろさんの鬼のような形相にも全く気付かない…。

「…どうやらワシらの心配は杞憂に終わりそうじゃの」
「は。 あのタイプは多くの場合自滅します故。」


一行の微妙な空気に全く気付かず、にこにこ顔で練り歩く大輔は、ある意味天才かも知れない。
「と言う訳で到着しました! ここで昼食にしましょうー!!」
大輔が大喜びで一軒のお店を案内してくれた。 京都市内でも有名な食べ放題のお店らしい。 事前に昼食のリクエストを店長にしていて、「肉」の一言でここに決めたそうだ。
元旦から営業しているお店、結構あるもんだなぁ、と妙に感心する。

「獅子舞亭…?」
「そ! ここの店長とも知り合いだから、お手頃価格にしてもらえるんだー!!」

店に入ると、元旦だというのに本当に結構な数の客が入っていた。
店員に声を掛けて奥から顔を出した店長に挨拶をすると、こてパパのことを考え個室に上がらせて貰った。
こういう時、顔見知りというのは本当にありがたい。 大輔の顔の広さに感心する。

席に着くと、どんどんと料理が運ばれてきた。 綺麗に脂の指したお肉が運ばれてきて店長のテンションもアップするも、次第にそのテンションは下降してきた。 と言うか、料理の準備が着々と進む度に全体的に空気が微妙になっていったのだが、そこは流石の天才・大輔君! 全く気に止めず大喜びで号令をかける!!

「さ! みんな、どんどん食べてねー!!!」


食いづれぇ…

モクモクと食べる大輔を見ながら、皆の頭には一つの言葉が浮かんでいた。

それは、共食いじゃないの…?


市内散策も適当に済ませ、一行はローカル線に乗って移動を始めた。
今夜泊まる旅館は市内から少し離れたところにあり、ローカル線で五つほど駅を移動する必要があるらしい。 特急列車とは違うためゼブラの力ではどうすることも出来ないが、それでも客数はそれほど多くは無かった。 一応念のため再び変装しつつ、鉄志は今度は自分が虎鉄の膝に座ると言い出した。 遠慮して自分が座ると言った新郷に、顔面ほぼゼロ距離でお願いしてきたパパの必死さがちょっと新郷をビビらせた(笑)

「ほら、みんな!! 富士山見えてきたよー!!!」

このローカル線は列車の型が古いらしく、自分たちで窓を開けることが出来る。
大輔は少し身を乗り出すと、窓を全開にして外を覗き込むと声をあげた。
窓が開いた瞬間、風が一気に流れ込んだ。 標先市も温暖な土地とは言えまだまだ肌寒かったというのに、ここは春の陽気を思わせるほどの温かさである。 髪を撫でる風が、本当に心地よい。
大輔の声に促されて全員が外を見ると、遠くに蒼く霞んで富士山が見えた。 
歓声が上がる中、特に喜んでいたのが虎鉄である。 彼は修学旅行時、この景色を見ずに終わっていたのだ。 その絶景に、まるで子供のようにはしゃいだ。


ーこの富士は偽物だ。
かつてこの国にあったその山を、神々が懐かしんでここ、京都に創った「擬い物(まがいもの)」だ。
その事を知っているから、この山を綺麗だなどと思ったことは一度も無かった。
だが、どうだろう。 自分は今、こんなにも

こんなにも

感動している

この景色を共に見てくれる者の存在が、喜びの声が、眩しい笑顔が、こんなにもこの景色を美しく見せるなど、自分は考えたことも無かった。
世界は 

こんなにも美しかったのか


「いらっしゃいませー」

旅館に到着すると、女将が独特の訛りで迎えてくれた。
感激しつつも、虎鉄は気が引けていた。

「遠いところを、ようこそいらっしゃいました」
「あの、それより…入って来ちゃって良かったんですか…?」

虎鉄が当然の疑問を口にする。
そう、この旅館の正門は戸が閉められており、ハッキリと「本日休業」と書かれた札が掲げられていたのだ。 彼らは大輔の案内で従業員用の入口を通って中に入ったのである。

「良いんですよぉ。 大輔からお話を伺いまして、それでしたら貸切の方がおくつろぎ頂けるかと思いましてね、折角ですから従業員の皆にもお正月のお休みをあげようと、我儘(わがまま)させて頂いたんです。 ですので本日はどうぞお気遣いなく、御ゆるりとおくつろぎ下さい。 おもてなしは全て、この大輔が責任をもって行わせて頂きますので。 申し遅れました、私、大輔の母の春日井 静(かすがい しず)と申します」

着物の女性は、綺麗な姿勢でお辞儀をした。
皆も一緒に頭を下げた。 しかし、と頭を下げたまま虎鉄は大輔の母の姿を伺い見る。
大輔の年齢を考えても、もう結構なお年のはずであるが…お世辞ではなく若く見える。
加えて、虎鉄の目から見ても、美人であった。 綺麗に纏め上げた髪も、化粧っけの無い肌も、とても50代後半以降には見えない。 それに、大輔がかつて自分に話してくれた内容から考えて、もっとキツイ印象を抱いていたのだが…彼女がグータラの旦那にキレる姿が全く想像出来ない。 

こういう人こそ切れさせてはいけないんだろうなぁ…。

お辞儀が終わると、大輔の母は鉄志に歩み寄った。
サインでもねだるのだろうかと一瞬思ったが、そうでは無かった。
「虎鉄さんのお父様でいらっしゃいますね。 虎鉄さんにはうちの大輔が本当に仲良くして頂いて、どれだけお礼を申し上げれば良いか…。 本当に、ありがとうございます」
そう言うと、先程よりも深く頭を下げた。

鉄志もこれには完全に不意を突かれた。 慌ててお辞儀を返すと
「とんでもない! 大輔くんにこそ沢山良くして貰って。 こちらこそ何とお礼を申し上げれば良いやら…」
お互いの顔を上げて視線を合わせると、一緒に微笑んだ。

「これからもどうぞ宜しくお願いいたします」
ほぼ同時に言ってしまい、ふたり一緒に笑った。

あとの事は全て大輔に任せ、何かあったら内線入れなさいね、と言い残して大輔ママは奥へと移動した。
「と言う訳で、仲居さんも板さんもいないから自分達で全部やりまーす!!」
「なるほど、それでタダなんだ」
「そ! だから新郷君も虎伯さん達も遠慮せずにねー!! っていうか、色々手伝ってもらいますからね!」

タダで寝泊まりさせてもらえる上、温泉にも入り放題なのだ。 これでも申し訳ないくらいである。

大輔の案内で、まずは大きな部屋に通される。
襖を開けると、綺麗な和室が全員を出迎えた。 全員分の布団を敷いてもまだスペースが余る程だ。 皆が歓声をあげると、
「ここは荷物部屋にするから。 みんな適当に荷物置いちゃってねー!」

マジで!!?

「え、じゃあ寝室は別!? いいの!? そんな使い方しちゃって!!?」
「こんな機会滅多に無いんだし、豪勢に行こうよー」
大輔はニコニコしながら人数分の座布団を出した。

「大輔君、浴衣に着替えさせて貰っても良いかな?」
にろさんが上着を脱ぎながら訊くと
「どうせですから、みんな温泉入って来たらどうです? サイズ大きい浴衣、探して持って行きますから」

なるほど、と頷いて全員の顔を見る。 皆異論ないらしく、ウンウン頷いた。
再び大輔の案内で大浴場に行く。 脱衣場を見ただけで正直テンションが上がる。

めちゃめちゃ広いのだ。
中の温泉の広さが窺い知れると言うものだ。 それが完全貸切状態!!
じゃ!と大輔は浴衣を探しに行った。 戻ってくるのを待とうかと思ったが、かえって大輔に気を遣わせるだろうと先に入ることにした。
これだけ広いのに固まって着替えるのもあれなので、皆少し離れて着替える。 何とはなくそれぞれ二人組になって脱ぎ始めた。 店長と一緒になったのは新郷である。

「んー、にしても新郷って良い体してるよなぁ」
上着を脱いで上半身裸になった新郷に、思わず言ってしまう。 カミングアウトしたんだし、嫌がられるかなと少し後悔したが
「そうか? 昔の大河原の方が良い筋肉の付き方してた気がするが」

特に意に介していないようである。 本当、イイヤツっていうか…鈍いのかな?
そのままズボンも脱いで、さっさと棚籠に入れてしまう。
「へ〜、新郷ってボクサーパンツなんだ」

「ん? あぁ、そうだが?」
「いや、何か意外だと思って。 俺らの世代ってトランクス派じゃない?」
「あぁ、俺も大学まではトランクスだったぞ?」
「変えたんだ?」
「あぁ、自警団に入ってからな。 先輩に勧められて穿いてみたんだが、体を動かす派ならこちらの方が良いぞ。 収まりが良いから動きやすい。 逆にトランクスだと少し落ち着かなくなったな」
「へ〜」
「意外という話なら、俺は鉄志さんの方が意外だがな」

そう言いながら、新郷が少し離れて着替えてるこてパパに目をやる。

「まさかブリーフとは…」
「そう? むしろ世代的にはあれで正解じゃない? 何だと思ってた?」
「いや、想像してたわけではないが、やはり時代劇の印象が強いから褌を連想するかな」
「実際にはそうそう穿かないでしょ、褌」

あ、でも身近に穿いてる人いるな(笑)

「むしろ世代で言えば虎伯さんなんて褌かもよ?」
そう言いながら、さらに少し離れて着替えている虎伯に目をやってみる。
上着を脱ぎ終わって、ちょうどズボンを脱いだところである。


「どういう事ですか!!?」

「何がじゃ!!?」

「何で赤ビキニなんですか!!」
「し、下着のことかね…? わし結構アクティブじゃから、下着は出来るだけ布地が少ない方が蒸れなくて良いんじゃよ」

そういうもんかな…でも何故によりによって赤ビキニ…?
と、ここで気になったのが鷹継さん。 御主人様が赤ビキニなら、その主に仕える彼は一体どんな下着を着用されていらっしゃるんだろう…?
興奮を隠しきれず、そわそわしながら虎伯のさらに奥で着替えている鷹継を覗き見る。



それ何!!!!?

布地(っていうかレザー)面積が凄い少ないよ!!? しかもサイド、紐だよ!!!

「虎伯さん!! あれ何ですか!!?」
失礼ながらも思わず指さしてしまう。

「あぁ、あの下着じゃろ? あれ、あヤツの自作なんじゃよ。 まったく、すぐああいうワケ分からんものを付けてくるのじゃ」

そうなんだ、素敵な従者じゃないですか。 羨ましい事山の如しなんですけど。
しかしあれ、どうやって脱ぐんだろう…? と疑問に思っていると、自分の下着が話題に上って満足したらしく、おもむろにサイドの紐を横に引っ張った。 どうやらゴム状になっているらしく、そのまま足を片方ずつ抜いた。 脱ぐ瞬間微妙に向こうを向いてしまい、絶妙の位置でおちんちんを見逃してしまった!!
もう!と悔しがっている間に虎伯もさっさと下着を脱いでしまい、そのまま浴場へと向かう後姿しか見えなかった。 その後から父とにろさんも浴場へと入っていった。

一気に取り残されてポカーンとする店長に
「何ボーッとしてるんだ? さっさと入ろう」
新郷が声をかけてきた。 彼を見ると、すでに素っ裸である。

「…なぁ新郷、一つ質問して良いか?」
「ん? 何だ?」

「どうして誰一人、前を隠そうとしないんだ…?」

浴場へと入っていった誰一人、そして隣にいる新郷すらもタオルを肩から掛けて前を全く隠そうとしないことに、軽い劣等感を感じるガラスのハートの持ち主、虎鉄君でした。


トランクスを脱ぎ、あたかも決して曲げられぬポリシーであるかのようにタオルを腰に巻き、風呂に入ろうとすると

「あれ? こてっちゃん達まだ入ってなかったの?」
大輔が人数分の浴衣を持って入って来た。 向こうで着替えてきたらしく、大輔は既に浴衣姿である。
「じゃ、浴衣置いておくね。 皆の服はさっきの部屋に持っていっておくから」

「…大ちゃん、一緒に入らないの?」

パタパタと耳を動かしながら、恥ずかしそうに笑った。
「だってほら、ね?」
そう言いながら、新郷に目をやる。 新郷はその意味がサッパリわからずキョトンとしていたが、虎鉄はすぐにその意図を察し、新郷に先に入っててと促した。

「ほら…俺もう、ちょっと興奮しちゃってるし…」
新郷の姿が浴場に消えると、大輔が恥ずかしそうに口を開いた。
「こんな姿見られちゃったら、こてっちゃん恥ずかしいでしょ…?」

そう、やっとここで虎鉄も気付いた。
大輔は自分が恥ずかしいんじゃない、虎鉄が自分の事で恥ずかしい思いをするのを気にしているのだ。 
大切な義弟が自分の事で恥ずかしい思いをするのが、一番嫌なのだ。
虎鉄は、自分の浅はかさを悔やんだ。

「…大ちゃんも新郷も、やっぱり凄いな…」
「ん?」
大輔が全く意図を読み取れずキョトンとする。
「いや、俺今日、新郷にカミングアウトしちゃったんだよ。 新郷も、それにあの日の大ちゃんも、俺のこと受け入れてくれた」

列車で聞いた、新郷の台詞を思い出す。
「そうだよね、そういう所も含めて大ちゃんだもんね。 俺の大好きな大ちゃんだもんね」
「こてっちゃん…?」

「一緒に入ろう? 俺、大ちゃんが見られ好きなの、全然恥ずかしくないからさ」
「え! 本当!!? じゃあ明日からまたノーパンでドキドキして良い!!?」
「いや、法に抵触しないギリギリの綱渡りはやめようね」

えぇ〜、と不満そうな顔をし、二人一緒に笑った。


「みんなー、注も〜く!!」

脱衣場から出てきた虎鉄が声をあげると、並んで体や頭を洗っていた全員がこちらを振り向いた。
「何やってるんだ虎鉄? さっさとこっち来い」
にろさんが不思議そうに言うと、脱衣場の向こうから大輔がぴょこっと顔だけ出した。
「ん? 大輔君、何してるんだ?」

皆の視線に耳をパタパタさせながら顔を真赤にし、大輔が俯いた。
「…ひょっとして、一緒に入るのが恥ずかしいのかい?」
「体は大きいのに、意外と繊細なところがあるんじゃな、大輔君」

皆の違う方向への誤解に虎鉄が全てを話そうとすると、大輔がそれを目で止め、自分で話すとサインを送った。
「あの、実はちょっと違くって、その…俺…」

全員が黙って聞いている。 虎鉄は正直気が気でない。
大ちゃん! もうちょい!! 熱いエールを視線に乗せる!
大輔も小さく頷くと、大きく息を吸った。

「俺…実は、その…人に裸とか見られるの…興奮するっていうか…そういう…性癖というか…」
決心に言葉が追いつかず、上手く表現出来ないのをもどかしく思っていると

「大輔君、役者の素質があるのかもね」
真っ先に口を開いたのは、意外にも鉄志であった。

「…役者? ですか…?」
「うむ。 役者なんていうものはね、見られるのが大好きでなければやってられない職業なんだよ。 見られて、喜ばれて、声援を受けて、大興奮するような者達なんだ」

そういうと鉄志は、珍しく声を出して笑った。
「い、いや、そういうのじゃなくって…アソコが大きくなっちゃうというか…」
「そういう者も沢山いるよ? そう特別な性癖じゃない。 それよりほら、一緒に体を流そうじゃないか」
「こてパパさん…」
「そうそう、いい年こいてチンコ見られるのが恥ずかしいとか言ってるどこぞのオッサンより遥かにマトモだぞ?」
「な!! 何ですかにろさん、失礼な!!!」
ハハハと、にろさんに合わせて皆も笑った。
「自警団にもいますね、見せたがりとか見られたがりとか」
「コヤツもそういう所があるぞ? のう?」
「は。 虎伯様の執務室にて全裸で待機するよう仰せつかるときなど、興奮醒めやらず、隆々たる象牙の先端より朝露をしとどに溢れさせた次第にございます。」
「比喩が逆にイヤらしいですよ!!? ていうか、えぇ!!? 虎伯さん、そんなプレイを!!?(ハァハァ)」
「ババ、バカ者!! そんな事滅多にせんじゃろう!!!」

たまにはするんだ…

「じゃ、じゃあ…一緒に入らせてもらっちゃおうかな」
照れくさそうに角をなでる大輔に鉄志が笑顔でおいでおいでする。
「でも大丈夫かな…俺、既に」


「こんな状態なんですけど。」

本当、大ちゃんは本物だなぁ…

鉄志の横に座っていた新郷が一つずれて、間に大輔が座るための椅子まで持ってきてくれた。
「あ、新郷君、ありがと」
新郷も笑顔で返す。 股間がえらい事になってる大ちゃんに対しても普通に接してる、新郷め…惚れるぞ?(笑)
鉄志も楽しそうに話をする。 よっぽど大輔のことが気に入っているらしい。 ポンっと手を打ち耳を立てて「そうだ!」と声を出した。
「私はもう洗い終わったから、大輔君の背中流してあげようか?」

なにぃいいいいい!!? 驚愕のにろ&新郷!!

「え!? い、いいんですかパパさん?」
「勿論」
にっこり笑顔で返事をすると、立ち上がって大輔の後ろに回り、大きな背中をゴシゴシしだした。 気持ちよさそうにしている大輔、そして楽しそうに背中を流す父を見て虎鉄も閃いた!

「じゃあ自分がさらに父さんの背中を流しますよ!」
え!? と顔を真赤にして驚くこてパパ。 ベロチューはするのにこういったスキンシップはまだしていないらしい。

息子に背中を流されて、幸せいっぱいのようである。 気持ち良さそうに、頬を染めながら耳をパタパタっと動かしている。
父の背中を洗い終わると、「そうだ!」と先程の鉄志と同じリアクションをした。
「折角ですから、皆のお背中も流しますよ!」

「い、いいのかね…?」
実は先程から背中を流して貰ってる鉄志を少し羨ましそうに横目で見ていた虎伯が、頬をほんのり赤くしながら訊くと
「おイヤでなければ」
ニッコリ笑って答える。
「とか言いつつ虎鉄、お前」
「? 何ですか?」

「イヤらしいこと考えてるんじゃあるまいな…?」


「何ですかその目は!!? 失礼な!!! そこまで外道じゃないですよ!!!!!」

皆が一斉に笑った。
とはいえそこはお年ごろの同性愛者の虎鉄君、やっぱりちょっとはドキドキせずにはいられなかったり(笑)

一番端の新郷から順に流していったのだが、皆イイ背中してるので思わず頬が赤らんでしまう。
しかし、意外だったのは順番的に最後になった虎伯である。
体毛が自分と同じかそれ以上に多いモッフリした背中が可愛いと思ったが、洗う時の感覚が明らかに他の者とは違った。 何と言うか、父の背中を流している時と殆ど同じ感覚なのだ。 気持ち良さそうにしている横顔を見て、純粋に嬉しい。
何だろ…? 同じ虎獣人だとこんな感覚になるのかな…?
背中にザバーっとお湯を掛けて洗い終えると、虎伯が嬉しそうに礼を言った。
照れて頭を掻いていると、にろさんが声を掛けてきた。
「よし、全員洗い終わったな! じゃあ次は…」
「?」

「前を洗ってもらおうか」

「本当デリカシー無ぇなぁあんたは!!!!!」


「時に、虎鉄君には想い人とかは居るのかね?」
皆で広々とした露天風呂に浸かっていると、虎伯が唐突にそんなことを言い出した。

「い!! いませんよ…!!! そんな人…」
突然の予期せぬ質問に、顔を真赤にしながらジャブジャブと湯を波立たせて虎鉄が否定のリアクションをした。

「ふむ、では好みのタイプの男性などは居るかの?」
そう言われて、ふっと知り合いの顔が思い浮かんだが、ブンブンと頭を振ると恥ずかしそうに顔を半分湯に沈めてしまった。

「はは、虎鉄君は恋には奥手なのかの?」
「もう〜、意地悪言わないで下さいよ…」
半分ぶくぶく言いながら答えると
「では質問を変えよう。 この中じゃと誰が一番好みかの?」
「お! いいですねー! こてっちゃん、ここで告白の練習だよ!」
「えぇえええ!!? 何で俺ばっかに話題が集中してんの!!?」
「いいじゃないか。 大河原って恋愛関係苦手みたいだし、そういうのもありじゃないか?」
どうやら新郷君は、自分がその対象になるとは全く思っていないらしい。 自分にはそっち方面の魅力があるなど全く考えていないのだ。

う〜ん、と不満の声を漏らしながらも、ちょっと皆の顔を順に見る。
好みねぇ…。

「…………にろさん…?」

先程まで何を言われても平然としていたにろさんが、急に顔を赤くした!
「嘘つけ!! お前最初は俺に苦手意識持ってただろ!」
「そりゃそうですよ。 にろさんって初対面には警戒心が強いし、仕事だって最初の頃はこーんな顔して怒ってばっかだったし!」
人差し指で両目を釣り上げてリアクションすると
「そうだよな。 そういやお前、仕事中も気付くと俺のケツばっか見てたもんな」
ニヤッと笑って反撃するにろさんに、今度は虎鉄が真っ赤になる!
「ナニィイイイ!!? いつから気付いていたというのですか、自分の必殺のチラ見に!?」
「バカめ! 心眼だ!! 心の目を開いて見るのだよ!!!」
「そんな達人級のスキルを!!? しかし元はといえば、そんないいケツしてるにろさんに責任があるのですよ!!」
「ケツだけではあるまい!! お前は股間もよく見ていたぞ!!!」
「小さいとわかってからはそうでもなかったはずです!!」

二人の掛け合いに、皆が一斉に大笑いした。
二人ともその声で「二人だけモード」が解除され、顔を赤くした。
「隼人君と虎鉄は、本当にいいコンビだね」
「こてっちゃんのお店の店長と副店長だもんね」
「それに大河原とは、叔父甥の関係なんですよね?」
三人が楽しそうに笑って話してるのを聞いて、こてにろペアは目を合わせてバツが悪そうに照れた。
「にろさんもこてパパさんの大ファンなんでしょ? そういう所もこてっちゃんと似てるというか、気が合うのかもね」

一瞬、空気が止まった。 にろさんがキョトンとしている。
「あ! やはりそうなのですか!? 俺も昔から鉄志さん…じゃまずいか、大河原のおじさんの大ファンで、何となく同じ空気を感じてたんですよ!」

見ると、にろさんの顔がみるみる真っ赤になっていく! 普段なら饒舌に全てをかわすにろさんが、一切一言も声に出せずにいる!

「そ、そうなのかね…隼人君?」
「い、いや…あ…その」
「ふふ、まだまだだね!! 二人とも誤解してるよ! にろさんを長年見てきた自分には手にとるようにわかるよ!」
「虎鉄…!」
期待の眼差しでにろさんが甥っ子を見る!!

「にろさんは、父さんに淡い劣情を抱いているのさ!! 父さんが絡んできた時にだけ見せるあの表情!! 間違いないね!!!」

「お前は帰れ!!!!!」

「え!? 違うんですか!!?」
「違うわ!!!!!」
「えぇ〜? じゃあ何なんですか?」

これ以上おかしな態度をとれば、また変な方向に話が行きかねない。 仕方がない…
「その…デビューした時からの…大ファンでした」
「隼人君が…私のファン…?」
鉄志も驚きながらも、気恥しそうに顔を赤くした。
「ですから、その…悠(ゆう)の姉の旦那さんが義兄さんだと知ったときは、本当に驚いて。 ずっとお会い出来るのを楽しみにしていたのですが、義兄さんとは結局会えないまま虎鉄と出会って、その、こいつがあまりにも可愛くって…いや! ゆ、悠がですよ!? 妻が虎鉄をやけに気に入りまして何度か遊びに行かせて貰ったのですが、結局疎遠になるまでお会いすることが出来ず…どう切り出せば良いやら、機会を失ってしまいまして…」

観念したのか、ここまで一気に話してしまった。 今や顔は茹でダコのように真っ赤である。 超絶激レア映像だ(笑)
「ではひょっとして、おじさんが出演されてるビデオやDVD、全部持ってます?」
「無論だとも!! 昔ビデオしか無かった作品も、DVDで出し直したものは全て買い直しているほどだ!!!」
「俺もですよ!! いやぁ、嬉しいですねー!!」
「でもにろさんのお部屋掃除しに行ったとき、そんなの見当たらなかったですけど?」
「お前にだけは知られまいと、秘密の場所に隠してあるのだ!」
「なんだ…てっきり父さんの再婚相手はにろさんかと思ってたのに

「阿呆か!!!!!」

「ハハハ、すっかりフラれてしまいましたな」
今までのやりとりを静かに見守っていた虎伯が、楽しそうに笑った。
「もう〜、虎伯さんが変な質問するからですよー! って、別にフラれたわけじゃないですけど」
「ハハ、ではコヤツなんてどうじゃね? にろ君と同じ鬼種じゃし、中々イイ体しとるじゃろ?」
鷹継の事を、顎でクイッと指す。

「いやいや!! 鷹継さんは虎伯さんの恋人じゃないですか!」
「じゃからそういう関係ではないと言っておるではないかね。 のう?」
「は。 そういった関係とは若干異なる関係かと存じます。」
「ほれ、ちょっと立ち上がってみせい」
「は。」

え? え!? と動揺する虎鉄の目の前で、鷹継がザバーっと立ち上がった! 湯もそれなりの深さがあるのだが、如何せん背が尋常ではないために、虎鉄の丁度目の前に鷹継のモノが晒される形となった。
ギャァアアアアアアアアス!!!!!となって目を伏せるも

「気にせんで存分に見て構わんぞ?」
「は。 折角お会いした同性愛者同士にございます。 どうぞお気になさらずに私のモノなどで宜しければ御存分にご覧下さい。」

両腕を後ろに組んでクイッと腰を前に突き出す体勢を取る石動に、照れながらも、ついつい視線を向けてしまう。

目の前にある鷹継のそれは、かなりの大きさを誇っていた。
身長がある為、標準サイズでも小さく映ってしまうだろうが、彼の身長と体格をもってしても比率的に大きいと感じるサイズである。 普通に大きい。 というか、野太いという表現が合いそうだ。
ただ、意外だったのは、亀頭の半分ほどが皮に包まれていたことだ。 源司さんも同じような包茎だが、彼のような分厚い皮ではなく、薄い皮で覆われている形だ。 クイッと上に引けば簡単に剥けそうである。

「仮性包茎なんですね」
思わず口走ってしまい、あたふたする虎鉄に
「は。 作用にございますな。」
特に何とも思わないのか、むしろ少しトーンを柔らかくして鷹継が答えた。

「この皮を虎伯様が引っ張ったり摘んだり引っ掻いたりされるのがこの上なく気持ち良くございまして、むしろ仮性包茎で勝ち組なのでございます。」


「何を言っておるのじゃ貴様はぁあああ!!!」

べしべしと蹴りを入れられるも、当の本人は至って平然としている。 体格に差がありすぎるのだ。 む〜!と虎伯が唸ると
「本当に仲が良いですよね、お二人って。 やっぱり自分が割って入ったりなんて出来ませんよ」
笑いながら虎鉄が言う。
「い、いや…本当にそういう関係ではないのじゃが…」

虎伯にとって石動は、唯一自分を覚えていてくれる大切な人物である。 優秀だし、腕も立つ。 可愛い孫がどんな男と付き合うことになるのか気になる所なのだが、この石動になら、少し寂しくはなるが安心して任せられると思ったのだ。 まぁいろんな面で不安に思う部分もあるのだが…。

「それに…」
物思いにふける虎伯に、虎鉄がさらに言葉を続けた。
「それに、自分と鷹継さんとじゃ釣り合いませんよ。 鷹継さん、格好良いし」
「そんな事はございません。」

普段とは少し違う大きなトーンに、虎伯が驚く。
「虎鉄様は、素敵な方だと思います。 とてもお優しく、可愛らしい方にございます。」
「そんな…い、いいですよぉ。 それに『可愛らしい』って…もう35なんですけど」
こんな風に面と向かって言われたのは初めてで、どう答えれば良いやらわからず照れるばかりである。
耳をパタつかせながら、ハハハと笑う。
「そ、それに鷹継さんにだって好みとかあるでしょ? あ、やっぱり虎伯さんが好みなのかな?」
「虎伯様は、『虎伯様』が好きなのです。 好みのタイプと言うのとは少し違うかと存じます。」

へ〜、こういう話は初めて聞いたな。 そうか、コヤツにはコヤツなりの好みのタイプというものがあるのか。

「無論、好みから外れているという訳ではございません。 虎鉄様も同じです。 好みなどと上から目線のようで誠に恐縮な物言いでございますが、お付き合いするのに申し分なく好きにございます。」
虎鉄が真っ赤になる。 同時に、真顔でこういう事をスラスラ言える鷹継が凄いと言うか、羨ましく思った。

「ふむ、ではこの面子の中に、いわゆるその『好みのタイプ』というのはおるのか?」
虎伯も思わず興味をそそられ、少し話の腰を折るような形になってしまうも訊いてみる。
とー

「は。 誠に恐縮ながら、お一方おられます。」

マジでか!!? 意外な答えが帰ってきた!
キャーと、虎鉄も頬を赤くして喜ぶ!
「え! 本当ですか!!? 誰誰!!?」

しばしの沈黙。 そしてー


えぇえええええええええええええ!!!!?

いきなり自分に白羽の矢が立ち、焦る新郷!!
全員の視線が一気に集まり、慌てふためく!!!

どうする新郷!!? どうなる新郷!!!?
死亡フラグを回避したかと思ったら、また違うフラグが立ちそうだぞ!!!(笑)

京都の夜は、まだまだこれからという事で〜っ!!

続くっ!!!


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