X'mas × Xmas(クリスマス×クリスマス)


「メリークリスマース!!!」

スーパーセクシー!!!!!


短編 「X'mas × Xmas(クリスマス×クリスマス)」

ここは最高神様達がいる「無限の箱庭」。
閉ざされた空間内にあるビルの屋上である。 

今日も今日とて最高神達とは思えない、おもいっきり日常を満喫しております。

「…あれ? 鷹人君、胸の紋章は?」

彼ら最高神の証である胸の紋章が、何故か彼から消えている。

「あぁ、あんなダッセェもん、心核機能を制御して消しちまったよ」
「そ、そう…消せるんだ…」

…相変わらず器用なことするなぁ

「んなことよりホレ! 鷹人サンタのお出ましにもっと喜んだらどうよ!?」

バハハハ!! と笑う鷹人君。

「あのさ、そのイベント、もう無くなってるんだけど」
「は?」

笑顔のままで鷹人が聞き返すと

「もう遥か数百年前、現行の神様制度が出来たときに無くなったの。 クリスマス。 ほら、元々キリスト教での生誕祭だったんだっけ? 普通に神様がいる以上、全く意味が分からないイベントになっちゃったから。」

睦月の話が終わると、鷹人の顔から一瞬にして笑顔が消えた。
角に被せたサンタ帽を放り投げ、上着をバサっと脱ぐと、無くなった左腕の付け根の辺りに血がドプドプと集まり始める!!

「貴様ら…」

鷹人君の素敵な大胸筋に、消えていたはずの紋章が浮かび上がる!!!

「素晴らしき日本の文化を消し去るとは、一体どういう了見だ!!!?」

「ドリルはやめてよドリルは!!!」

額に恐怖の汗を流す最高神様・睦月君(笑)

「そんなので開発されちゃったら、総受けアンソロなんてレベルじゃないよ…!!!」

「アンソロォ…? レベルゥ…??」

「え!? そこ怒るとこ!!? 自分だってさっき『メリークリスマス』って言ってたじゃん!! ていうか、そもそも間違ってるしね!? クリスマス、日本の文化じゃないじゃん!!!」

フンッと鼻で笑う鷹人君。

「睦月、お前は相変わらずのあんぽんたんだなぁ…」

「あんぽんたん!!!?」

久々に聞いたよそんな単語!!!

「いいか? 日本で『クリスマス』って表記する場合、よく『X』の横に『チョン(’)』って付けるだろ?」
「…あぁ、付けるねぇ」
「あれはな、英語表記ではありえん綴りなんだよ。 英語表記なら普通に『’』なんて付けずにそのままX・M・A・Sと書く。」
「(相変わらず無駄に詳しいなぁ…)」
「つまりだ…」
「?」

「『’』を付けた『X'mas』は日本独自の文化という事なのだ!!!!」

えぇえええええええ!!!?

「『メリークリスマス』も頭の中で『’』を付ければ立派な和製英語、日本語なのだ!!!!」

えぇええええええええええ!!!!!?

「つう訳だから、さっさと復活させろよな、クリスマス!」
「いやいや! じゃあどう説明するんだよ、『クリスマスってどういう意味?』とか訊かれたら!!?」

「じゃあ『ガンダム』ってどういう意味だよ!!!?」

えぇええええええええええええええ!!!!!?

「だろ!? ようは『そういう名前です』って広めりゃいいんだよ!」

滅茶苦茶な理論ではあるが言いたい事を全て言うと、鷹人はまた人懐っこい笑顔を見せた。
怒りも収まったらしく、胸の紋章も再びその姿を潜める。
腕の物騒なドリルアームを上腕部からパージすると、外れた瞬間アームは全て血液に戻り、シュッと消えた。

「ほんじゃ、プレゼントやっるぜ〜♪」

フンフンと鼻歌を歌いながら、持っていた大きな袋に手を突っ込む。
プレゼントは英語じゃないの?という質問は、再び何やら怒りを買いそうなので飲み込むこととした。

と、大きな箱を取り出し、睦月に渡した。
「ほれ、メリークリスマース!」

ちょっと呆気に取られながらも箱を受け取る。 ズシッと結構な重さがあった。
目で訴えると、鷹人はにっこり笑って頷いた。

包み紙を丁寧に剥がし、中の箱を開けると…

「これ…天体望遠鏡…?」
「おうよ!! どうだ!? 嬉しいか!!? 血で創ったんじゃねぇぞ? ちゃーんとこの前行った星見町って所で買ってきたんだからな!」


言葉が出なかった

遥かな、無限とも思える時間をクロムと二人きりで過ごしてきた睦月にとって、こういう喜びは本当に、
本当に久方ぶりのものだったのだ。
鷹人が、たった一人の親友が、自分が空を観るのが好きだということを今でも覚えていてくれた事が、本当に嬉しかったのだ。

「あ、ありがと…」

顔を真っ赤にしてそう言うのが精一杯だった。
消え入りそうな小さな声だったが、それでも鷹人は大満足であった。
そして、幸せそうな睦月を見て、クロムも喜んでいると

「ホレ。 こいつぁオッサンにだ」

ポスッ、と小さな箱を胸に押し付けた。

「わ、私に…?」

驚きながらも、同じく箱を開けてみる。
小さな箱から出てきたのは、これまた小さな木箱であった。
「?」と思いながら蓋を開けてみると、可愛い音楽が流れ出した。

オルゴールだ。

クロムは厳つい外見とは裏腹に、こういう可愛らしいものに目がない。 大喜びで礼を言い、その場に座り込むとオルゴールに聞き入った。 随分と気に入ってくれたらしい。

「鷹人!! 鷹人!!!」

その光景を見ていた人物が、大喜びで声をかけてきた。
残る最高神ズの一人、樹である。
自分の顔に人差し指を指し、私の!私の!!をリアクションで訴えている。

鷹人もちゃんと心得ているというリアクションを親指立てで返すと、袋の中から小さな包みを取り出した。
掌に入ってしまう程の小さなものだ。 樹は欲張りおじいさん並に邪推する。

小さな入れ物ほど、高価なプレゼントに違いない!!!!!

ワクワクしながら包を開けると、中から黒い、ゴム製の輪っかが出てきた。
「…?」
疑問の視線を鷹人に向けると

「コックリングだ」

と、あっさりと答えが帰ってきた。
えぇ〜? 今更…?? と、ぼやく樹に鷹人は不満そうだ。

「んだよ、あんま嬉しくねぇのか? チッ、折角あんな恥ずかしい目にあってまで買ってきてやったってぇのに

ピクッと樹の羽が反応した。

「恥ずかしい目にあう…?」
「おうよ、樹相手ならエロ玩具が良いだろうと思ってな、お手軽な一品を買おうとしたんだがよ、サイズがどうとか言われてな。 樹のデカさなんて知らねぇじゃねぇか。 まぁ俺と大して変わらんだろうと言ったら、試着してみろと吐(ぬ)かしやがる

!!!!!

「し!! 試着したのか!!?」
「他の客がいる前でいきなり脱がされたんだぜ? キンタマぎゅうぎゅう押し込まれて痛てぇの何のって。」
「そ、それからどうしたのだ!!? ちゃんと装着出来たのか!!!?(ハァハァ)」
「装着出来たよ。 でも勃起してもちゃんと具合が良いか見てぇとか言い出してよ」

!!!!!!!!!!!

「しし…したのか!!!?(ハァハァ)」
「無理やりさせられたんだよ。 チンポいじられてな。 しかもお次は射精の具合も試した方が良いと」

「ししし、したと言うのか!!!?(ハァハァハァ)」

「店員二人がかりで俺の体をいじくりやがってな。 他の客も皆集まっちまって、見られまくったってのによぉ…」


えぇえええええええ!!!!!!?
※樹さんの妄想レベルは「熟練の手練クラス」です


「んだよ、結局やられ損かよ。 まぁ、いらねぇもんは愚痴ったってしゃあねぇか…」

そうボヤいて鷹人がリングを取ろうとすると、樹はそれをポッケに仕舞った。

「お? いるのか?」
そう訊くと
「ウム。 それだけの思いをして買ってきてくれたものを無碍(むげ)にする訳にも行くまい。 ところでちょっと済まないが私は用事を思い出したのだ。 自室にいるが入って来てこないでくれ給えよ?」

そう言うやいなや屋上からビルの中へと姿を消した。

「(樹さん、間違いなく今の話をオカズにする気だな)…で鷹人君、今の話って本当なの…?(ハァハァ)」

睦月の方に振り向いた鷹人は呆れ顔である。

「ハァ? んな訳ねぇだろ? 知り合いのド変態が喜びそうな話はねぇかって、店員にネタを提供して貰っただけだよ」

返せ!!! 僕らの純情を返せよ!!!!!

「まぁ樹にはああいうプレゼントが一番だろうと思ってな。 一応普通のも買ってあるから、あいつが落ち着いたら渡してやるさ」

そう言って袋から取り出した最後の包には、分厚い一冊の文芸書が入っていた。

「あいつもこの時代の推理小説はまだあんま読んでねぇだろ? 俺はよくわかんねぇから店員のオススメを一冊買ってきてやったんだよ。 結構古いヤツらしいが、かなり面白いらしいぜ?」

そう言うと、またニッコリと笑った。
探偵事務所を開いていた樹さんが推理小説に目が無い事も覚えてたんだ

本当、いやになっちゃうくらい、完璧なんだもんなぁ…


腕の中にある、大好きな人からもらったプレゼント。
ずっと忘れていた、かつては当たり前のようにそこにあった「幸せ」

それは、とても小さなものかもしれないけど、とてもとても大切なもので


確かに、こういう日があっても良いのかもしれない



そう、素直に思ったのでした

こうして、12月24日は翌年以降「X'mas」として決められ、「親が子供にプレゼントをあげる日、又は

好きな者同士がプレゼントを交換する日」として、のんけもメンバーの間に新たな火種を撒くこととなったのでした。


メリークリスマス!

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